再エネ出力抑制分をEVなどで吸収できるのか?
九州電力管内では再エネの出力抑制がしばしば話題に挙がっている。再エネ業者への嫌がらせだという声、再エネは不安定で使い物にならないという声、様々な意見が挙がっているが、電力需給において実際にどの程度の規模感になるのか調べてみた。ソースは以下となる。
<九州電力送配電 系統情報の公開>
https://www.kyuden.co.jp/td_service_wheeling_rule-document_disclosure
1時間間隔で、エリア需要、原子力、火力、水力、地熱、バイオマス、太陽光(実績)、太陽光(抑制量)、風力(実績)、風力(抑制量)、揚水等、連系線、の項目がMWh単位でデータ化されており、今回は2020年4月~2021年3月の1年間を調査した。
太陽光と風力の抑制量、そして双方の合計値をヒストグラムにした結果が以下である。
再エネなので発電量がゼロとなる時間帯も多く、結果として抑制量もゼロになることが多かったため、グラフが偏りすぎてしまった。
そこで、ゼロを除外して再度ヒストグラムにした結果を以下に示す。
そもそも設備容量が太陽光に偏っているため、風力は殆ど誤差レベルになっているが、再エネの出力抑制の最大値は2021/3/27 12:00の2,969[MWh]となった。
では、再エネ出力抑制電力を九州のEVやハイブリッド車で受け取れるのか?
国土交通省 九州運輸局の掲載されているデータによれば、ハイブリッド車が113万台、EVが1.7万台となっている。
ハイブリッド車のバッテリー容量としては、通常のハイブリッド車では1kWh程度、プラグインハイブリッド車ではプリウスの場合は8.8kWhであるが、現状はプラグインハイブリッド車の普及率は圧倒的に低いため、ほぼ通常のハイブリッド車であると仮定する。
EVのバッテリー容量としては、最新のリーフでは62kWhであるが、初期型のリーフが24kWhであることも勘案し、現状の平均は20kWhであると仮定する。
そうなると、九州地区のEV・ハイブリッド車で受け取れる容量は約1,500MWhとなり、仮に全車が空であったとしても再エネ出力抑制の半分しか満たせない。
https://wwwtb.mlit.go.jp/kyushu/toukei/nenryoubetsu.htm
では、将来的にはEVやハイブリッド車で受け取れるのか?
九州地区の全車両は約950万台であるが、一般的に予想されているように2030年時点で従来型の車が50%、EVが25%、ハイブリッド車が25%という比率になっていると仮定する。そうすると、ハイブリッド車もEVもそれぞれ237.5万台となり、確保できる容量は約50,000MWhとなる。
この場合、容量の6%(約3,000MWh)を提供してもらえれば再エネの出力抑制は不要になる。
自動車の稼働率は数%程度であり、殆どの自動車が駐車されているため、駐車場への電力系統を整備すれば解決できない話ではない。また、リチウムイオン電池の場合、フル充電は劣化が進んでしまうため、例えば設定値として90%に制限しておけば受け入れられない数値ではない。
再エネに蓄電池を併設する話はよく聞くが、新たに設備投資するにしても莫大な金額となるため、既存設備であり追加投資が殆ど不要となる自動車を活用する方法がリーズナブルな解決策となるかもしれない。