オールEVにした場合の電力消費増加量の試算
2021年1月、政府は2035年までに内燃機関車の新車販売を禁止する方針となり、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV、PHV)、燃料電池車(FCV)しか購入できなくなる。個人的には、石原都知事時代のディーゼル車規制以来の大胆な方針に感じるが。トヨタの豊田社長は、原発なら10基、火力なら20基ほど追加で必要になると述べていたが、実際にどの程度必要になるのか試算してみることとする。尚、計算の簡略化のため、全てEV化される前提とする。
走行距離
国交省が公表している自動車燃料消費量統計年報(令和元年度分)によれば燃料別の年間走行距離が分かり、ガソリン車が約6,191億km、軽油車が約1,889億km、LPG車が約65億km、CNG車が約1.4億km、とのことである。
燃費
EVとしては、日産リーフの燃費は7~8km/kWhとなっているが、日本公正取引協議会が設定しているEVの燃費は6km/kWhであるため、今回はこの値を用いる。尚、軽油車は主にトラックなどの大型車であると考えられるため、エイヤで乗用車の4分の1となる1.5km/kWhと仮定した。
必要電力
以上を基に、必要電力を算出すると、年間230TWh必要という試算になった(表1参照)。所謂原発1基分と言われる設備容量100万kWで計算すると、設備利用率70%の場合、年間発電量は6.1TWhとなるため、230TWhに対しては38基必要ということになる。
2035年時点で燃費が現在の倍になっていると仮定すると、原発は半分の19基必要となり、EV以外の車もある点、人口減少により自動車台数も減少する点なども考慮すると、原発10基という豊田社長の発言は確からしい数値であると考えられる。
おわりに
日本の年間発電量は約1,000TWhであるため、230TWhという数値は2割増しという規模感である。原発や火力で賄うのか、再エネが本当に主力電源化されるのか、いずれにせよ電化という需要は省エネでは賄えなさそうだ。